さてさてさて、というわけで前回にひきつづき、インプと除去とどちらを取るのが正解だったかを検討するお話です。


 しかし検討とするとみせかけていきなり結論から入ります。除去ピックが正解でした。理由は単純で、病気の拡散のほうがはるかに強力であるから。比較すればするほど比較にならないということがわかってきました。

 ドラフトで除去が重要であることは今更言うまでもないので、病気の拡散がどう強いのかとか他のカードとのシナジーとかについては特に言及しません。とりあえず、除去だから強いということで話を進めます。
 では、肉食いインプというカードはどのくらい強いのでしょうか。もちろん感染クリーチャーの中では強い部類に属します。しかし感染というテキストをはずせばたかだか4マナ2/2飛行+α。 4マナ2/2飛行+α程度のクリーチャーと5マナのほぼ万能除去ですよ。そもそも比較になるわけがないんですよ。ではなぜ、これら比較にならない両者を私は天秤の両端に乗せてしまったのか、その点こそが今回真に検討すべき事項なのです。
 私は感染デッキを、文字通り「感染クリーチャーで殴り殺すデッキ」と定義していました。そのため、強い感染クリーチャーを集めることが強い感染デッキ作成への近道であると思ってドラフトをし、その結果インプをピックしたのですが、この定義がそもそも間違いだったのです。厳密に言うと間違いだったというか、定義としては間違っちゃいないけど、ドラフトの指針になるようなものではなかった、といったニュアンスでしょうか。
 ちょっと語弊がある言い方になりますが、スキジリクス級の化け物をもってするのでなければ、純粋に「感染クリーチャーで殴り殺す」ことはまずできません。なぜなら、感染クリーチャーは「弱い」からです。感染クリーチャーはそのマナコストに比して、軒並みパワータフネスが低く設定されています。まともに戦闘をすれば、非感染クリーチャーとは勝負になりません。
 ではそれは何故? 毒をもっているから? 違います。感染クリーチャーは、感染を持っているが故に弱いのではなく、弱いが故に毒で武装せざるを得なかったのです。こう考えると感染デッキを新たに定義づけることができます。つまりこうです。

 「我が陣営のクリーチャーは弱いからライフに10点のハンデをつけてくれ的なデッキ」

 定義というにはいささか長いですが、割と的を射ていると思うんですけどどうですかね。この定義を使うと、感染デッキを普通のデッキと同じ視点から見られるのではないでしょうか。つまり「10点削れるかどうか」を常に意識してデッキ構造を考えるのが重要だということです(そんなの普通じゃん、とか突っ込まんでくださいね。なにせドラフトあまりやってないものですから・・・)。
 といってもライフ10点削るのって普通のデッキでも決して簡単なことじゃないですよね。相手は除去を打ってきますし、ブロッカーも立ててきます。ちょっと大きいクリーチャーが出るだけでちまいのは全く殴れなくなったりします。さらには相手もこちらのライフを攻めてくるわけですから防御にまわすリソースも必要になります。実際こちらのデッキが弱くて相手のデッキが強かったりすると、ライフ1点も削れないまま負けることだってあります。
 で感染デッキの話に戻ります。感染デッキは、基本的に戦闘力に劣るクリーチャーでそういうシビアな攻防を繰り広げねばならないわけですが、クリーチャーが相手より弱いのですから普通に戦って10点削るなど無理のひとこと。ちょっと強いブロッカーを前に立ち往生するシーンしか見えません。ということは、場の優位を確保するための補助呪文の価値が普通のデッキ以上に高くなってくると考えられるのです。するとここでまた新たに感染デッキを定義づけることができます。これです。

 「弱いクリーチャーでも殴りにいける環境を作るデッキ」

 この定義ならドラフトのピック基準にもなり得ます。つまり、感染クリーチャーをピックしてから脇を固めるのではなく、脇を固めてからクリーチャーをピックするべきだということです。極論するなら、デッキの基本構造を強力なものにできてさえいれば、クリーチャーの能力などどうでもいいのです。さまようものでもいいし、沼のチンピラでもいい。たまたま感染クリーチャーであってもいいし、別にふつうのクリーチャーでもいい。件のインプとて枝モズに毛が生えたようなもので(さすがに言い過ぎか?)、毎ターンパンプできるわけでもなし、蜘蛛でピタ止まりなのも枝モズと同じ。デッキをつくるパーツとしての重要度において病気の拡散のほうが圧倒的に上だったのです。

 さてさて、長々と書いてきましたが何のことはない、やはり除去からとりましょうということですね。感染デッキもマジックという同じ枠の中にあるんですから当然といえば当然なのかもしれませんが、やはり言語化してはじめて認識できるものがある、といったところでしょうか。

※追記です
 巨大化系カードでバックアップすることを前提としてインプを取る選択肢も検討しましたが、この環境には飛行対策が結構な種類存在していることを考慮するとあまり得策ではないと判断しました。横にクリーチャーを並べて巨大化で押し切る作戦がとれる点、つまり巨大化を「弱いクリーチャーでも殴りにいける環境を作る呪文」として効果的に活用できることが感染デッキの大きなメリットではあるのですが、おなじ仕事をするなら除去魔法の方が有用なシチュエーションが多いかと思います。私自身が多分にコントロール志向のプレイヤーだというのもありますが、今後似たようなケースに遭遇したらまず除去を取ります。それが原因で負けたら、その時はまた別の理屈をひねり出すことにします。といったところで、ではではまた。

コメント

カントク
2011年4月20日17:10

タイトルが「35歳で独身で」(OL進化論)ぽいですねw
考察記事いつも楽しく読ませてもらってます!

この記事の結論としてはやはり除去ピックが正解のように思います。
理由としては諸説ありますが、最大の点はこのデッキを使う人がNewman氏だからです!ボードコントロールでマッチを優位に進めることの得意な氏だからこそ、除去ピックが正解であると確信しています。

実際、対Newman戦では除去でコントロールされるほうがキツイ!
例えば、対めそ007だとクリーチャーを展開し常にプレッシャーを掛けてくるので、優良クリーチャー取られる方がキツイかな?

Newman
2011年4月21日21:09

カントク殿
 おっとタイトル褒められた。これはちょっとうれしいぞ。しかし「35歳で独身で」とか聞くともう他人事じゃないのでどきっとしたりしなかったりしますがそれは置いといて・・・

 やはりピックにも個性とかプレイスタイルみたいなものが現れてきますよね。自分としては好みとかスタイルとかにこだわらず常に「正しい」ピック、構築、プレイングをしようと思ってドラフトに臨んでいますがそうそううまくもいかないという。あれこれ理屈をこね回しても現実はシミュレートをあっさり覆してくれますしね。そのへんに人を相手にしたゲームのおもしろさがあるんでしょうかねえ。

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